2007-01-01から1年間の記事一覧

辺見庸の言語

新聞の切り抜きを整理しなきゃ・・久しぶりに辺見庸氏が書いていた。彼の言葉の撰びが私はとても好きなのだ。今回も、「滴るほどの緑をたたえていた窓外の公孫樹(いちょう)がいつの間にか眩しく黄化し、はらほろと旋回しながら散り落ちるまで病院にいた」…

ジャンジャンな 夜

渋谷の喧騒を抜け 通りに面した階段を降りていくと 小さな小屋があった 舞台では女優さんが歌っている すこし気だるくて 時にリズミカルに 行ったことはないけれど なつかしき時代のパリ といった感じのサウンドに 自分を溶け込ませてみたりして すこし背伸…

問い→観察→納得→嬉しい

ちょっとした縁で、動物行動学者日高敏隆氏の名前を知ったのは、もうずいぶん前のこと。まず訳書である有名なコンラート・ローレンツの『ソロモンの指輪』から。それからエッセイなどを読ませていただいていたけれど、今回講演を聴く機会にめぐまれる。19…

What have they done to the Rain

同じく国際女性映画際で「花はどこへいった」坂田雅子初監督を観た。監督は59歳。初作品である。 ベトナム戦争の枯葉剤の影響、実体を取材するドキュメンタリーだったが、30年以上経つ現在もまったく戦争は終わっていなかった。そのことに愕然とする。い…

本と出会う日

unaスペースでやっている朗読企画。各自がテキストを持ち寄り、シャッフルして人が持ってきたものを読むという遊び。単純だが、思いもかけない感想を想起する。 その日に集ったテキスト・・・ 映画「マザー・テレサ・メモリアル」のチラシ,「TEMPEST…

ある時代の空気

濃密な一日。 青山ABCにて内田樹×柴田元幸対談。『村上春樹にご用心』の刊行記念である。組み合わせはベストだろう。この組み合わせで翻訳夜話として一度聞いているが、今回もとても興味深い話でおもしろかった。その感想は後日。終了後、ちょうど隣でや…

古典から探る今日的なテーマ

日曜日、フラッと観たNHK3チャンネル。ETV特集 「21世紀のドストエフスキー 〜テロの時代を読み解く〜」 ドストエフスキーの長編『カラマーゾフの兄弟』が外語大の亀山郁夫氏の手で新訳出版されたそうだが、それが若者に好評で、30万部を突破したそ…

老いとは存在のゆらぎ

前回老いのことなどを書いたら内田樹氏が“存在のゆらぎ”が老人の特徴と、老いに関しての文章を書いていた。で、こんなことを言っている。 「生まれたときから現在の年齢までの『すべての年齢における自分』を全部抱え込んでいて、そのすべてにはっきりとした…

老いのバランス

この夏脱水症で入院して以来 義母は独り暮らしを諦めた 90歳をとおに越えても 好んで独り暮らしを選んだ 点滴生活から 徐々に徐々に回復し 嚥下も 摂食も 排泄も できるようになった それでも身体能力は格段に低下した 精神はすこぶる健康でも からだがま…

動的平衡

日曜日、仕事が予想外に早く終わったのでABCで行なわれた『生物と無生物のあいだ』の著者トークに行った。 著者の福岡伸一氏についてはほとんど知らないままにタイトルにひかれ、買って読んだ。これがおもしろいかった!それから注目していた人。 夏から…

不在のいい訳

季節はすっかり秋になっている。ずいぶんとココも留守にしてしまい、ぺんぺん草が生えていそうである。季節も動いたし、ぼちぼちいくとしよう・・・ この夏は予報どおりの猛暑で、とんと参った。 思考がすすまない。PCの長文が読めない。キーボードに向え…

違う位相で語りあう

長崎原爆忌。銃撃死した伊藤市長を引き継いだ田上長崎市長の平和宣言も広島市長同様、はっきりと姿勢を打ち出した。「誤った認識」と久間発言を批判し、非核三原則の法制化を求めた。法制化とは言葉(ニュアンス)だけではなく、システムができること。これ…

日本の8月

毎日ウンザリする暑さだ。それも今年は早朝から暑い。年々暑さが身にこたえるが、もっと高齢の方はもっと大変なんだろう。そんな思いでTVの画面を見る。毎年ヒロシマはジリジリする暑さ。白い太陽光線の反射。その中で手を合わせる人々の手がだんだん弱々…

極意「人と会う」

実は先日BOOK・OFFを初体験した。「つまらない本ばかりが二束三文で売っている」という思い込みで、入りたくなかったのだ。当初近くにある大手書店の支店に行ったのだが規模が小さく、棚が貧弱で、目的が果たせなかった。そこで帰り際に大きな支店であるBOOK・…

投票日に逝った人

早朝、自公民党惨敗のニュースとともに、小田実氏の訃報。 『論座』8月号で小田実氏の言葉が掲載されていた。末期がんであることを公表していた小田氏が病床から「死ぬ前に言っておきたいことがある」というタイトルで語っているのだ。写真の顔はまだまだお…

「Blindsight」を観る 

音声ガイド付ドキュメンタリー映画「Blindsightブラインドサイト」を品川で観た。 http://www.blindsight-movie.com/ブラインドサイトとは「なにかが見えたという主観的な資格に対して身体的には外界からの刺激を受け止めているにも関わらず、意識(主観)に…

追悼河合隼雄さん

今日は体調が悪く一日伏せっていたのだが、夜にはなんとか19日に亡くなられた河合隼雄氏の追悼番組を見ることができた。ある会でお話を伺い、気さくに言葉をかけてもらってから、程なく倒れられたのだった。文化庁長官という肩書きなど感じさせないほどフ…

災害三連休

世は海の日とかで、三連休だが、天気が悪い。一昨日は仕事の企画を台風直撃との予報で、やむなく中止をした。関東でもそれまで大量の雨が降っていたし。大事をとったのに、当日の開催時刻にはなんと一滴の雨も降らず、晴れ間などものぞく天気。準備してきた…

著作権と共謀罪

編集者である藤本由香里さんのコラムを読んでいる。むかーしに、一度担当著者と一緒にお会いしたことがある。今回は著作権について。私などは縁の薄い世界で、どこがどうなのか、いいのかわるいのか、判断しづらい問題だなと思っている。ただ、「共謀罪」と…

ブラインドサイト

視覚障害者のための映画音声ガイドを作成している知人がいる。おもしろい映画だと言いながらやっていた作業が完成し、上映の運びになった。目の不自由な子どもたちと山に登ったドキュメンタリーらしい。音声ガイドは、なにが起きているのか、状況の説明も入…

性と死

ある日、死に対する悲しみとか不安というものは 有性生殖であるからではないのか・・・とふと思った。二つの異なる性が融合し全く違う生命が創られる。それはどちらとも共有する遺伝子を持ちながら、どちらでもなく、それぞれから独立した個体となる。 つま…

虚空を見る

このごろボディワークに通い始めた。西洋医学ではどこも悪いところはないと言われる。病気として認知されない。だが、実際はつらい症状があるのだ。そういうような症状に対して、東洋医学とか代替医療は、病状認識をしてくれる。そしてその症状に応じた処方…

生涯一学者

いっとき梅原猛の本を読んでいたことがある。このごろは読んでいなかったが、講演のお誘いがあり、行ってきた。彼は80歳をすぎて、益々研究に精力的であった。最近足で歩いた京都の本9巻を出版した。文献を読まずに、まず現地に行く。文献を読んでいくと…

考える≒妄想

この頃、身近ではないが、思いがけない人の訃報をよく聞く。「まだ生きていてほしかった」とか「残念」という感情を抱きながら、そもそも「死」とはなんだろうという問いが、まわりにふわふわと漂っていた。あるとき、「なぜ死が悲しいのだろう」とふと思っ…

日常における創造性

作品展のお知らせをいただいていながら、うっかり最終日手前。友人と銀座まで。 程よい大きさの画廊での三人展。知人は本間一恵さん。なんでもない荷造り用の帯状紙テープを組んで折っていくプレイティングという技法。彼女が作り出す立体の空間がとても面白…

物理と哲学

いま大学では教養課程で必須だった哲学と物理の講座が激減しているということだ。どうも、大学の経営に関係しているらしい。つまり、大学の実績を示さなければならない業態になっている昨今、英語や経済に力を入れ、実績が見えないそれらの課程はだんだん先…

平均律以前

unaで、古楽器のレクチャーコンサート。古楽器は現在では使われていないものをさすらしい。15・6世紀の楽器を資料から復元し、音を起し、演奏をする。演者は立川叔男氏。当日買ったCDの解説を読むと、彼は13歳からギターを始め、スペイン留学もされたギタリス…

日本が担える役割

国民投票法の成立。いよいよ憲法改正への道が整ったことになる。憲法は遠い存在で、直接生活には関係ないと思われているのか、あまり国民の方は熱心ではない。政府だけが、やみくもに急いている感があるのだが…。しかし、憲法は国民から政府に差し出す規範、…

違いの共有

unaで行う朗読ゲーム(ロクロの会)ではいつも感想を書いたり言ったりする。なるべくそれぞれの感じ方の違いと出会い、共有したいからである。いつも感心するくらい多様だ。そこには上手いも下手もない。各自いまを書き留めるという程度のことでいい。それで…

団塊世代の実体

このところ2007年問題とか、なにかと団塊の世代に関する話題が多い。商戦のターゲットにもされているらしい。大抵は海外旅行だとかセカンドハウスだとか、悠悠自適でゆとりある老後をスタートさせるだろうというニュアンスである。そんな風評に疑問を呈…