問い→観察→納得→嬉しい
ちょっとした縁で、動物行動学者日高敏隆氏の名前を知ったのは、もうずいぶん前のこと。まず訳書である有名なコンラート・ローレンツの『ソロモンの指輪』から。
それからエッセイなどを読ませていただいていたけれど、今回講演を聴く機会にめぐまれる。1930年生まれだそうで、びっくりするほど歳を重ねられていた(当然こちらも同じに歳を重ね・・)。学会の常識に疑問を持ち、実験で新事実を証明したエピソードなど楽しいお話を伺い、その後少しの間だったが、目の前でお話を聞かせていただく場に居合わすことができた。
私は「生きものはちいさい頃から好きだったのですか」という質問をした。すると彼は特に好きではなかったし、集めたり、かわいがることもしなかったと応えられた。そして「ただ、虫が這っていると『どこに行くんだい?』とか『なにをしたいの?』と、話しかけ、じっと見ていた」と言われた。そして、木に登りだしたり、葉っぱを食べたりすると、「そうか、君はそれをしたかったのか」とひとりで合点しているような子どもだったそうである。
ストンと落ちた「なるほど!」。そのころから、自分の中に問いをもち、それをじっと見て観察する。そして、自分なりに納得する。そういう課程を楽しんでいらしたんだ、と私も合点がいき、なんだかこちらもうれしくなった。気のせいか、その時が一番日高氏も嬉しそうに話をされた気がしたので・・。
この興味の進め方は、生命や自然や人など他のものと同じ態度であることを、エッセイなどからも感じることができる。これからも益々お元気で。
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