What have they done to the Rain

同じく国際女性映画際で「花はどこへいった」坂田雅子初監督を観た。監督は59歳。初作品である。

ベトナム戦争枯葉剤の影響、実体を取材するドキュメンタリーだったが、30年以上経つ現在もまったく戦争は終わっていなかった。そのことに愕然とする。いま生まれている子どもに、それ様の奇形、障害が未だに現れているのだ。父側も含め汚染した母体から生まれた子どもの出産児。汚染は断ち切れていない!

監督の夫君はフォトジャーナリストだった。頑強な夫が突然に発病し急逝してしまう。呆然とするなかでふと、結婚するときに言われたことばを思い出す。彼は元米軍兵士で、ベトナム戦争時に枯葉剤を散布していたという。「枯葉剤を浴びているから子どもは持てないよ」と言われた。当時彼は帰還した祖国を捨て、日本に来ていた。当時の若者に多かったヒッピー的世界観で、彼女も子どもを産む産まないはあまり気にならなかったそうだ。

その後彼はフォトジャーナリストになり、ステキな写真を残している。すこぶる元気であったことを考えると、枯葉剤の関連性が濃厚であると思い至り、枯葉剤に興味をもっていく。彼の友人に話を聞いたりしながら、現地で調査をするうちに映像に残したいと思うようになる。そこから映画のつくり方を一から学び、ベトナムの被害家族へのインタビューをはじめていった。

レンズは目を覆うような被害者の奇形を直視する。ダイオキシンのすさまじい威力と、そして米軍側の枯葉剤が有効な作戦であるという報告映像・・・(時効だとは言え、こういうフィルムを公開しているのは米国のいいところでもある?)

何度も過ちを繰り返し、いつになったら学ぶのだろう・・・「雨を汚したのは誰」から始まり、最後に「花はどこへいった」の歌詞で終わる。そのままの世界が、いまの現実でもあるのだ。衝撃とは、そのことである。

だが、救いようのない映画ではない。正視に堪えない映像が多いなか、こころの隅で灯がともるような暖かさを感じさせられる。善も悪も包容してしまうような懐深い愛の存在に・・・。
来年に公開予定らしい(制作配給シグロ)。