動的平衡

日曜日、仕事が予想外に早く終わったのでABCで行なわれた『生物と無生物のあいだ』の著者トークに行った。 著者の福岡伸一氏についてはほとんど知らないままにタイトルにひかれ、買って読んだ。これがおもしろいかった!それから注目していた人。

夏からの身体機能低下で集中できず読書も遠ざかっていたが、これだけはワクワクドキドキしながら読むことができた。トークは彼自身のことから始まり、生命科学界のおさらいのように、科学者のエピソードが綴られていく。素人でもわかりやすく、興味が中断することなく読み進むことができる。

トークは訥々とした語り口で、本に書ききれなかったという事柄の話をされ、それがまた次の興味を誘う。次作品が楽しみである。本の補足と次回作のテーマとなりそうな(勝手な予測)事項をあげられた。主に、科学が進化する上での落とし穴的なものとして>>
・部分という名の幻想ーーーどんどん細分化して倍率を上げていくことで、明らかになるものがある反面失われてしまうものがある。全体が見えなくなる危険。
・モザイク消しの秘密ーーー例えばモナリザ像をモザイクでぼかしても、認識できてしまう。それは人間には優れたパターン認識能力があるため。しかし、逆になんでもパターン化してしまう危険。
・空耳・空目ーーーランダムなものでも、そこにパターンを見出してしまう危険。新しいものに対してバイヤスをかけてみてしまう危険。

それから、ゲノムが解明され、生命誕生の環境が保証されても、さてそれで生命が誕生するのか?という問い。もちろん生命は立ち上がらない。それはなぜか。生命には時間が折りたたまれているからなのだと彼は言う。(わかるけれど、、、困難なテーマだ)そして福岡氏は「生命に部分はない。そして生命には時間がある」と言われた。どのように文字化されるのか、興味深い。

帰りにサインをしていただいたのだが、そこには彼が支持する生命観(?)「動的平衡」の朱印が押されていた。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)