極意「人と会う」
実は先日BOOK・OFFを初体験した。「つまらない本ばかりが二束三文で売っている」という思い込みで、入りたくなかったのだ。当初近くにある大手書店の支店に行ったのだが規模が小さく、棚が貧弱で、目的が果たせなかった。そこで帰り際に大きな支店であるBOOK・OFFに立ち寄ってみたのだ。
入ってみて驚いた。すごい品揃えではないか。広い店内には棚がずらりと並び、出版社・著者別に整理されている。そのうえ、目を疑うほどの安さ!もちろん、割引率の悪いものもちゃんとある。で、これ以上本は買うまいと思いながら、ほしかった本が見つかり、数冊買い求めてしまった。
その中に、先日亡くなられた河合隼雄氏の対談集がある。とてもおもしろい。ずいぶん昔の本で、対談相手にはすでに鬼籍の方が何人もおられる。生前河合氏の話を伺ったときに“受容オーラ”を感じていた。実際、タクシーに乗っても、気がつくと運転手さんが自分を語りだしているということがよくあると、エピソードを披露された。
対談集では、冒頭に対談相手と語り合うことについて触れている。ああ、受容オーラとはこういう態度からだったのかとストンと落ちた。
相手の世界に対して可能なかぎり自分を開き、自分の人格を失ってしまうほどのぎりぎりの線まで、相手の世界を許容する。ほとんど自分の人格を消し去るほどの態度をとりながら、最後のところで一人の人間であることを失わない。
というような「会い方」を基本姿勢とされていると書かれている。まさに極意である。しかし、実際そういう想いは持っていても、だれでもができるものではない。できない。そんなことも含め、彼が実際家として、日々なにをどう考え深めていたのかが、随所に感じ取れる。重ね重ね河合氏の死を惜しむ。
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