記憶の劣化

電車のお供にと持ち出した本の中に寺田寅彦『柿の種』がある。一気に読むことはなく、その都度何篇かを読んできたものだ。岩波文庫大型版で、文字が大きく読みやすいうえ、ソフトカバーなので携帯しやすい。

パラパラとページを繰ってみて驚いた。ほとんどに付箋がしてあるのだ。にも関わらず、記憶にない!いくら加齢したとは言え、愕然とした。

特に科学者池内了氏のあとがき。
全編紹介できず残念なのだが、あまりに今日的で示唆深い。
記載日は1996.1.17。「阪神淡路大震災一周年の日に」とある。
最後は寺田氏の関東大震災後の銀座の街並みの記述からあわただしく復興が進む神戸の街を思い、彼の考えてきたことを、現在と重ね合わせ「こころ忙しくなく」思い及ぶ、そのようなひとときを持ちたい、という言葉で閉めている。

それを読んでいる私は当然のことながら、2011年に起きた震災と事故の今を重ねている。こんなことが10年前の発行時に書かれていたということさえ失念していたことに、絶句。

柿の種 (ワイド版岩波文庫)

柿の種 (ワイド版岩波文庫)

科学の限界 (ちくま新書)

科学の限界 (ちくま新書)