抗えないもの

月に一度続けているC講師と一緒に古典を読む会。貝原益軒の『養生訓』。
今は病の項。病いは生死にかかわる大事なことだけれど、施術とか薬にむやみに頼らず、日頃の生活スタイルが大事だと説いている。

今回は冒頭、医師で歌人上田三四二氏の歌を紹介された。

死はそこに抗ひがたく立つゆゑに
生きてゐる一日(ひとひ)一日はいづみ     上田三四二


人々は平等に死という「抗いがたい」ものに向けて生きている。確実に。従って、いまここに在ることのひとつひとつをかけがえのないものと大事に生きようということなのだろう。上田三四二は生死を見つめた医師歌人であるが、自身が大病を患ったことがさらに切実さを増したのではないか。


しかし凡人は忙しさに忙殺され、無為に過ごしたり、見失っていること多し。また一時の感情を引きずりそこに留まってしまうこともしばし。川の流れのように、生は留まることなく死へと進んでいるのだが。生・老・病・死 どれも抗えないものである。そのことにおいても留まることはない。


因みに検索していたら、歌集以外にも大病を経て出した短編集があるらしい。読んでみたい気が…


養生訓・和俗童子訓 (岩波文庫)

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この世 この生―西行・良寛・明恵・道元 (新潮文庫)

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花衣 (講談社文芸文庫)

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