小説の力
寒くなった。ちょっとした用件があるのだが…急に外出が億劫になる。
どうせなら友人の用件も済ませてしまおうと、すこし足をのばすことにした。
電車で何分もない所だが、その何分の間、本を読めるのがうれしい。買い物をしていたら、仕事を終えた友人から電話。お茶をしているから来ない?というお誘いだ。切実な話に、気がつくと思わぬ時間が経過していた。
さてさて、家に帰り、くつろぎながらテーブルにあった冊子を手に取ってみる。連れ合いがもらってきた企業雑誌なのだが、内容はブックレビューだった。開いてみると、なかなか興味ある作品が取り上げられている。
その中に翻訳家柴田元幸氏のものがあった。彼の文章もキャラクターも好きなのだ。『代表質問』。まずタイトルがおもしろい。13人の作家にインタビューをしてまとめた本。さすが翻訳者本、外国の作家のインタビューが読める。もちろん村上春樹氏も含まれている。
村上春樹氏のインタビューからの言葉が紹介されていた。
主人公の「僕」の行動様式は村上氏のそれとは大きくかけ離れているそうだ。
加えて「僕」に思いを託していることはないと言う。
<僕はそもそもは状況を書きたいんです。状況そのものを。そしてその状況のなかで人がどう動くのかということを書きたいんです。思いとかメッセージとか主張とかが先にあるわけではないんです。まず状況そのものに対する興味があるんです。>
と言い、登場人物は「連続的にぶっつけられる状況・物事」にほとんど無意識的に対処しなければならないという。
そして村上氏は、
<もし僕の小説に何らかのアクチュアルなメッセージというものがあるなら、それはおそらくこの無意識性の中にあるんじゃないのかな>
と言う。
<ボクシングと同じで、次にどこからいつパンチが出てくるかを全部相手に読まれているようなボクサーは勝てないです。でもだからと言って出鱈目をやっていればもっと勝てない。僕はそういうダイナミズムの中にこそ小説の力みたいなのをいちばん強く感じるんだけど、でもそういう風には思われない場合が多いような気がしますね。>
無作為の作為のようで・・・おもしろそうです。
ついついまた注文のクリックを・・・(おいおい、増え続けるぞ本!)
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