観察映画

土曜日のある会で、7人中3人がすでに観ていて、これからという人が1人という高視聴率?をマークした映画がある。計算すれば43%に近い。すごい数字じゃないですか!?


題名は「精神」という。想田和弘監督のドキュメンタリー映画。前作はやはり話題になったドキュメンタリー映画「選挙」。米国在住の監督で、世界ではすでに注目されているというから逆輸入とも言える。


同じように精神障害の人々と取り巻く人々を撮った「べてるの家」のビデオは何度も見ているので、タブーとされた精神病患者の世界をモザイクなしで、ナレーションも音楽もなしの、日本初の試み!と言われても、「ふ〜ん」という感じであった。


だが、先日想田監督とオウム信者を同様な手法で撮った「Å」の監督森達也氏との対談を聞き、それがいまの世の中ではどんなに困難なことかを知らされる。いまはドキュメンタリーを真っ当に撮れない時代だよとお二人がぼやくことしきり。


想田氏は熱い人だった。自身の映画を観察映画と呼び、素と素で向き合おうとしている。それは撮影側もそれにより変化変容してくこと。観察者自身も集団の分母に入ることを言っている。そして撮った責任を負う覚悟。


画面では診療とともに居場所を提供されたり、地域での暮らし支援をしている山本医師とスタッフも登場する。彼らには頭の下がる思いだが、こころこもる行為に対して、大量勝利した2005年に可決した障害者自立支援法の波が容赦なく押し寄せていた。思うように活動できない。観ていて痛いくらい。


べてるの家のビデオとはまた違った感触で、想うこと多し。東京ではイメージフォーラムにて8月7日(金)までです!!
http://www.laboratoryx.us/mentaljp/index.php


想田監督の話と、ガザ地区で人々の暮らしを撮っている大月氏の言葉が重なった。9・11の時に彼はニューヨークに居た。某放送局の取材で、街の様子を撮っていたのだが、悲惨な現場の一方で、会社やストリートや公園や家庭などでは変わりのない日常が繰り返されている。そんな日常の映像を送っても一切採用されず、より悲惨な状況を求められたという。大月氏もガザのきれいな空、親子の日常などは一切採用されず、個人として撮りためたものを展示という形で表現している。

想田氏も映像には表現できなかったものを、文字にしている。山本医師、精神科医斉藤環氏との対談も収録。『精神とモザイク』中央法規出版

精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)

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「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)

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選挙 [DVD]

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