人の出入りで場はできる
unaスペースを訪ねてくれたSさん。彼女は有体に言えば、ヘルパーを派遣する会社をやっている。お話をうかがうと、いわゆる高齢者や身体障害者のヘルパーというより、困っているひと、手を借りたいひとと、手を貸したい人、支援をしたいひとを繋げたいという気持ちからはじめられたのだった。
きっかけは知的障害を持ったお子さんの場を探しながら、活動していたときに、ある人から「お母さんが子どものためによりよい場を求めて探すより、人を探してあげたほうがいいのではないですか?」と言われたことからだという。
ずっと傍にいて、親が良かれと思う道を用意するのではなく、人と出会わせ、その人と相談しながら、彼ら自身で生き方を探るほうが、自立的ではないのか・・・と。
それまで学校や、作業所、グループホームと、居場所ばかりを考えていたが、それも親の敷いたレールの上の人生でしかないのかと、彼女は思い至る。目からウロコだったそうだ。
精神や身体障害者や高齢者は徐々に、多様な生き方が実現できてきたけれど、知的障害者は、未だそういう考えがないんですよね。現場でもいい子像しかない。酒を飲んで騒いだり、夜遊びする知的障害者はいないんです。
ヘルパーさんが付き添って、そういう経験もできるような選択肢を用意したい。制度的には実現可能なのだそうだ。
その日も、彼女は子どもさんをヘルパーさんに任せているので、出向けたというわけである。障害者関係の知り合いもずいぶんいるのだが、そういう話は初めてだった。考えてみれば、人がいればその人たちなりの場ができていく。ただスペースだけあっても、人が出入りしなければ場はできていかない。いまやっていることと重なる。
べてるの家の「非」援助論―そのままでいいと思えるための25章 (シリーズ ケアをひらく)
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