バリアフリー映画

朗読の会にきていたKさんが久し振りにunaのイベントに参加された。「忙しくてクタクタです・・」と連絡が入ったまま音沙汰なかった。
なにが忙しかったかと聞くと、ボランティアでやっているバリアフリー映画の仕事が大変だったのだと。バリアフリー映画。初めて聞く言葉である。


映画を観る人のためにバリアをフリーにする。何を。彼女の場合のバリアとは視覚障害者のためのバリア。視覚障害者が映画を観るための不都合とは、例えば会場がどっと沸いているが、なぜ受けているのかわからないといったこと。そんなことが重なると、そこにひっかかってしまい、映画に入り込めなくなってしまうという。そこで、台詞以外に所作や状況などを説明する音声案内をつくってい
るのだった。


例えば…「シャル・ウィー・ダンス」などでは、竹中労扮する普段はうだつの上がらないサラリーマンの踊り手が、ダンス大会では、派手な服装や派手なダンスパフォーマンスで、つけていたカツラがずれるなどといったドタバタを演じる。そんな視覚的なギャグが多い場面。台詞のあい間に、その説明を入れる。


彼女の話では、それが難しいのだという。一番適切な言葉はどんな言葉のか…。一瞬の“間”に入れるので、簡潔でなるべく言葉少なく。説明しすぎたり、長くなるとウザくなる。ジャストフィットな言葉をひとつ選ぶのに、唸っているのだそうだ。しかし、こうも言う。「それがいつしかはまるのよ」。


で、今回苦労したものとは、なんと山田洋二監督「武士の一分」。

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メジャーな作品である(私は観てないけど)。確かキムタクは目が不自由になる役をやっていた。監督やスタッフに理解があり、会社側も協力的であったため、今回日本で初めて音声ガイドをフィルムに焼き付けたものが作られたそうだ。通常のものは、フィルムとは別のガイドを同時並行に流されている。もちろん、微妙にズレルわけである。


そんな気の遠くなる作業を、ボランティアだけでやってきていた人たちの存在に、まず驚いてしまった。視覚障害の当事者の人たちも、その苦労を知らない人が多いということだった。世の中、いろいろな人がいるんだねぇ。ごくろうさま。