THE SUN

見逃したアレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」。近くでやっていることがわかり、観に行った。


ロシア監督の撮った終戦前後の昭和天皇。それだけで観たいと思っていたが、日本では無理とも思っていた。それが日本上映の要望多く、日本側で買い付けたという噂。最初一館だったが、その後どんどん上映館が増えているようだ。


観たかった理由の一つは、イッセー尾形ヒロヒト。ISSEY OGATA HIROHITO 秀逸。期待通りだ。いまもそこにそうして居るのではないかと思わせるほど。舞台がほぼ地下壕内ということもあり、全体がセピア色の静かなトーン。美しい。ロシアの監督はこういうのが上手いのか。他の日本人配役も妥当。桃井かおり皇后はどうしたって桃井かおりだったが…。


現人神が一夜にして人間になるという事件にはいまさらに驚愕だが、当人がいちばん動転していただろう。戦後日本の国を照らす太陽として、輝こうとしたヒロヒト…。内容にどれほどの真実があるかはわからない。ヒロヒトファンだという監督の想いもあるだろう。


だが、こういったテーマの映画が日本で観れることに、ある種感慨を覚える。思えば平成になって18年。20歳の人なら2歳。20歳までの若者は、昭和という時代の記憶はほとんどないということになる。昭和は遠くなりにけり。昭和も、戦争も、ヒロヒトも歴史のなかのできごと。


「そんなことがあって、いまの日本なのだ」ということは、知っておいていいんじゃないか。日本で、日本人では絶対に撮れない、外国の人だから作れた作品。それにしても、なぜ受けているのだろう。どんな層に受けいれられているのか、気になるところ。右側には、ちょっと抵抗があるのではないか。さりとて左側も発言に微妙なところがあり、どうなのか。やはり単に映像美を評価する映画好きなのかな。