デンマークの教育

友人Nさんが話をするというので、社会教育活動をされている清水満さん生のための学校―デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界主催の会に参加した。もう一人のスピーカーは一児の母であり、日本語教師をされているというデンマーク在住の方で、興味深い話を聞いた。


デンマークは福祉の国なので、消費税は高いけれど、出産に関するものなど医療費は大体無料らしい。ただし、歯科だけは保険がきかず、高額(オランダまで車で治療に行く人がいるくらい!)。学者でなく彼女のような一般生活者の経験談はデーターによらず、実感というところで、興味深い。


出産以降の子育てに、不安のないシステムができている。そしてゼロ歳からの保育園から幼稚園へと進み、6歳の就学前には「ゼロ年生クラス」があるそうだ。就学準備クラスである。 そこでは、まだ集団や勉学生活には時間が必要だと思える子は、延長できる。踊り場的な空間。


必然的にスタートから異年齢クラスができあがる。低学年は成績表、試験なし。6・3制でその間クラス替えなし。(お子さんは低学年だったので実情報はそこまで) 9年生から10年生とアフタースクールのようなものもあり、全寮制。その間、選択すればモラトリアムな時間が確保されている。デンマークの社会とは、当然にその延長線上にあるわけで…うらやましい考え方と環境である。


そこで、参加者から、障害者などの統合教育についての質問が出た。統合という言葉はないそうだ。そもそも統合教育とは、障害と健常を分けて考え、特別にクラスを作らず、混ざりあって一緒に学習しようという考え方。 デンマークに「統合」という考え方がないというのは、障害として認知しないということ。当然にそれぞれは個性があり、そのなかの一人、という位置付け。 もちろん重症と思われる人は、そのような施設もあるが、就学前の検査はないうえ、官の方から振り分けられることはないそうだ。「統合」という事態に、すでに区別の意識が入り込んでいることに気づかされ、ハッとなる。


また、地続きのヨーロッパは語学もいろいろ習うらしい。まず国語(デンマーク語)から英語だが、ドイツ語フランス語スペイン語なども習う。彼女は子どもに母語として、日本語をきちんとマスターさせたいため、夏には帰国しているのだそうだ。


笑ってしまったのは、このようにとても自由な環境で育った関係か、子どもたちが試験など困難、試練から逃げる傾向にあり、日本ではいまデンマーク方式を福祉に盛んに導入されようとしているというのに、逆にデンマークでは日本に「詰め込み教育」を見学に来ようという声もあがっているそうだ(真意の程はわからない…)。

極端から極端へ。人間というのは、どうも「中庸」「いい塩梅」ということが苦手らしい。なんとも皮肉な話ではある。