やわらかい服

友人の誘いで、新国立劇場「やわらかい服を着て」を観た。
作・演出永井愛。かたい服に対してのやわらかい服。かたい服とは軍服とか防弾服とかのメタファー。

こんなベタな作品が上演されていることに、まず驚きを感じた。まるでいま現在と同時進行のような設定。世界の人道支援などに取り組むNGO団体の事務所が舞台となっている。イラク派兵反対運動をしているさなかに例の人質事件が飛び込む。人質事件がNGOメンバーの心境、環境に微妙な変化をもたらし・・・

設定はいまどきの世情を反映していて、問題提起もあるが、中で起こることは、普遍的というか…人道支援という名目で、ひとつになっていたかに見えるグループだったが、ちょっとしたきっかけで、ひびが生じくる。そのギクシャクが、個人の関係まで波及し・・・
やはり行き着くところは、コミュニケーションのあり方。

場を営む私は、信条を重ねながら共感とともに見入っていた。3時間足らずの長丁場だったが、長い感じはなかった。先日脚本の重大さを痛感したばかりだったので(つまらない芝居を体験)、永井脚本に依るものも大きいと感じる。答えも主張もなく、解決もなく、自身で考えるべきことを置き土産にしたような芝居だった。