あらたうと〜

unaでの江戸文化を味わう会。
芭蕉七部集』から初夏の段を読む。視覚的な句が多く、窓外にきらきらゆれる若葉と紙面を行き来しながら味わった。ああ、ほんとうに生命溢れんばかりの季節。
「衣更え」から「若葉」、「麦」、「芥子」と移っていく。
衣更えは現代では6月と10月。といっても昔ほどはっきり風景は変わらなくなった。旧暦では4月1日となる。かへるは交、替、変えるとなり甲斐(カヒ)につながる。昔女御の下に更衣という役があったが、帝が衣更えをする儀式に関わる人たちを指した。衣を替えるということは、大事な意味があったと聞いたことがある。衣更えは脱皮、変容という意味合いを含んでいるようだ。

【ひとつぬいでうしろにおいぬころもがへ  芭蕉
「旅人であるから、衣を一枚脱いで、肩にかければ、衣更えになるんだなぁ」というような心境の句だろうか。負いぬは、「老いぬ」に通じると思うとまたぐっと深くなる。

【若葉して 御目のしずく 拭はばや  芭蕉
目を患い盲目となった鑑真和尚のことを詠っている。鑑真唐招提寺で詠んだのだろう。

【富士ひとつ うずみ残して 若葉かな 蕪村 】
若葉に埋もれた世界に、富士の山頂だけがうずもれずに、白い顔を覗かせている。まさに我が家からの風景である。実感。

初夏の青葉のころ、逆に金色に色づく麦の句、はらはらと薄いはなびらと、小さな実の芥子の句も味わい深かったが、省略す。