厳しさから生まれる美しさ

三寒四温。からだがちょっとついていけてない。
unaで定例の朗読の会があり、そこで読まれた横尾忠則対談集『見えるものと観えないもの』見えるものと観えないもの―横尾忠則対話録 (ちくま文庫)が面白く、持ち主から借りてきた。早速帰りに広げて読んだのは梅原猛氏とのもの。夢の話から入り、イマジネーション、イメージの話に発展していく。横尾氏という対談相手から引き出される梅原氏の言葉が興味深い。

梅原氏が調べていると突然あるイメージが現れる。直観のようなもの。そのイメージを学問的に実証していく。猛烈に調べなければならない実証なのだが、しんどいがそれが楽しい。また、横尾氏の何段階かを重ねていくインスピレーションと作品制作に対して、同様な方法を紹介している。実証とは調べることであるけれど、同時にイメージを形成していくこと。形成していくうちにまたイメージが出てくる。イメージが膨らんでも、どこかそれは最初のイメージと一致している。そういうものが成功して、イメージの膨らまないものは、だめです。

イメージがつながってくことがポイントなのだ。そのイメージすることには「観念」は関与せず、自意識がゼロの状態にならないと本当のことはできないと言われていて、そのあたりがすーっと入ってきた。

それからさらに話は展開し、感情表現だけではなく、客観的な目でコントロールする必要もあると言う横尾氏に対し、梅原氏が「芸術家は自己に忠実でなければならないが、同時に冷たく見る目を持たなくてはならない。相矛盾する二つの自己。(略)冷たく見てどんどん捨てていく。そしてギリギリで残ったものが一番大切だと思う。冷たくすればするほど、残ったものは美しいものです」と応えている。私はその言葉から氷のような美しさが伝わってきたような気持ちがした。