『大好き!ヒゲ父さん』

このごろ復刻版が目立つ気がするけれど…どんなんだろう。
子どもが幼いころ読んでいたもので、どうしても手に入らなかった本があった。それが、他の出版社からでていることを知り、やっと手に入れた。(即子どもにスルーしたが)
その本というのは、岩波少年文庫から出ていた『お父さんとぼく』である。(ISBN:4921192316)検索すると、ずっと「品切れ」となっていたもの。今回は青萌堂から、タイトルも『大好きヒゲ父さん』と改名されているが、内容は同じもの。シリーズで3冊出ている。

内容は文字のほとんどないコママンガである。初出は1934年、週刊誌『ベルリン・イラストレイト』というから、戦前のドイツマンガ。とても単純化された線で、描かれている父と子どものエピソード。ユーモアと愛情を感じるほほえましいもの。台詞がない分いろいろ想像する余地を生む。作者のe・oブラウエン(本名エーリヒ・オーザー)の生涯はなんとも悲惨なものだった。

彼は美術学校で学んだあと、作家のケストナーとともにブラウエンという都市にて民衆新聞で働く。その後挿絵や風刺絵で人気を集めた。やがてドイツはナチス政権下となり、ナチスを風刺したことで弾圧を受け、仕事が断たれた。そこで、ペンネームe・oブラウエン(例のふるさとの地名を採用)として、本書を雑誌に掲載して人気を得る。ナチスはそれに目をつけ、プロパガンダ誌「第三帝国」への執筆に協力するよう強要するが、断わる。しかし、ナチスに反政府活動行為で逮捕されてしまう。そして、裁定を受ける前夜、牢獄で自死を選ぶ。1944年、戦争終結直前であった。なんとも痛ましい。

ともかく再び目にできることはうれしいかぎり。