学問には境界はない

素数ゼミの謎』の著者吉村仁氏のことは、なんと数学のゼミナールだと勘違いして知った。

素数ゼミとは古来からあるセミの一種。氷河期を越え生きつないできたのには、素数13年または17年という地中生活の周期が大きいという。アメリカのある地域では氷河期の影響を比較的受けなかった地域があり、そこには素数ゼミが13,17年の周期で大量発生し、鳴き交わって、死に行く姿が見られる。地域を移動しないのも、種の保存の大切な条件。種にとっては素数の周期で地上に現れると、交尾する相手も同時期に現れることになり、また逆に他の種と周期が重なることが少ないため、交雑も少なく、従って種にとっての周期の乱れも少ないというわけ。それで原種に近い形で氷河期以前から存続している。

その吉村氏の言葉が印象に残る。
小さい頃は発達が遅く成績もすこぶる悪かった。おかげで深く考えるようになったと氏は言う。それからアメリカに渡りいろいろな分野の学会で勉強し、根本から考え自分なりの理論を構築した。
「いまの学問では細分化された研究がとても多いけれど、学問自体には境界なんてないんです。ぼくは広い分野を勉強し大きい器をつくって、一から組み立てた。略ー自然や現実の社会を自分で観察し発見し考えてつくった理論が、他の人の理論とどう違うかと考えることこそが必要なんです」。素数ゼミの謎