たかが口、されど口

最近家の周りに介護の車を見ることが多くなった。作家落合恵子氏も自らの介護の様子を連載している。かいがいしく介護されている様子はときに、痛々しくもあった。母上は今年に入り二度の入院をして、いまは鼻管から栄養を取る状態になってしまった。同時に言葉もすっかり忘れてしまったような状態。

ところが、口腔ケアの先生から頬や唾液腺のマッサージを勧められ、慣行するうちに、変化が起こってきたという。モジョモジョと話をするようになったそうである。ある日などは「いま何時?」と聞いたそうである。マッサージは毎日5分程度。もちろん口腔内の清掃、歯肉マッサージも行なっている。

さらには、ペロペロキャンディを舌先から舌の真ん中あたりまで滑らせて、味わってもらうこともしているそうだ。これは、なにげないようだが、すごいこと。つまり、自力で嚥下ができるということであり、口から栄養摂取の可能性が残されていると言えるからである。口から栄養摂取できれば、全身の状態は格段に改善していく。

口から食べる、しゃべる、呼吸するということは、たくさんの機能の集積、連携によってできているもの。それを失うことは、それら連携しているすべての機能も後退していくことになるのだ。たかが口されど口、なのである、