懐かしい未来

久し振りの銀座。一丁目のギャラリー小柳にてアーティスト束芋さんの個展。そのあと西銀座デパートあたりのなつかしい界隈を抜け、交通会館に出る。人類学者辻信一ファミリーの展覧会が開催されているのだ。先日青山BCのトークショーでお会いし、ご挨拶はしていたが、友人が彼と懇意ということもあり、覚えていてくださった。お兄さんは自ら作られた「わらの家」の制作の課程を記録した写真。以前は水墨画を描かれていたというお母様の作品は、パステルのきれいな色使い。近年どんどんきれいな色使いの絵を描くようになられたそうだ。家族で展示とはうらやましい限り。

辻氏は世界各地の写真。もちろん主宰するナマケモノ倶楽部のナマケモノの写真もあった。地平まで続く草原に二頭の鹿の写真。その下には黒人音楽が好きで北米に住み始めたころ、家ばかりでなく、いたるところが芝生で埋められていることに違和感を覚え、そのことが人類学者の一歩になったと書かれていた。他の植物を排除し、芝一色にしてしまうその均一性に、危機感を覚えたそうだ。いま地球の温度があがっているが、芝生も助長しているらしい。そのあたりのことを伺おうと思っていたら、辻さんが近くにいらしてくれた。先日のトークのときに気になっていたことなどを話し合った。

彼が少数民族や弱者などマイノリティーなものに惹かれていったのは、人類学者であったからではなく、結果であった。そしてマイノリティーなものに惹かれていたのはなぜかと問えば、それは「時間」ではないかと言われた。彼らに流れている時間がどれも心地良かったと。そこで、彼のキーワードのひとつ「スロー」とつながった。お忙しいのに、時間をたくさんさいてくださり、多謝。