また…

夕刊を見て、声を出してしまった。岡本敏子さんの訃報。まただ・・。岡本太郎氏の秘書を50年も続け、最後には養女になり、青山の美術館を継いできた方だ。享年79歳とあるが、もっとお若く見えた。何度かお話を聞いていて、言葉も交わしたことがある。

いつだったか、現代美術展のイベントで、松岡正剛氏との対談があった。終わってから正剛氏に彼女の感想を言うと「話してみればいいじゃない。そこにいるから」と言われ、お話をしようとしたことがある。けれど、彼女は展示されているワーク型の現代美術作品に夢中で、とても話かける余地がなかった。まるで童女のように喜び、はしゃいでいたのだ。そんな彼女を見ていると、まるで岡本太郎が生きているよう。表情とか仕草がそっくりなのだ(太郎氏はTVでしかみたことないけれど…)。美術家の島袋道浩氏との対談の時に、からすと太郎さんとの関係など、岡本太郎の意外な面を知り、親しみが湧いた。彼女の口から頻繁に出る「太郎さん」「太郎さん」という言葉の響きがまだ耳に残る。太郎さんという呼び方には愛しさが溢れていたから。

いつか訪ねて行きたいと思いつつ、もう適わないことになってしまった。心残りである。