ガンの海を文章を携え漂流する

『32歳ガン漂流』奥山貴宏が届く32歳ガン漂流 エヴォリューション。WEBマガジンでときどき目を通していたが、本文はまだ読み始めたばかり。2003年に出た『31歳ガン漂流』の続編。ライターだった31歳の彼は、医師から肺がんと診断される。ガンを抱えたそれからの日々の日記である。余命2年と医師に宣告され、2005年2月19日現在で、2ヶ月ほど月が過ぎているという。だが病状は確実に進行し、余談を許さない。

見出しの言葉の上に必ず表記されているデジタル文字の日付が切迫感を誘う。刻々と命を刻んでいるようで、ちょっとこころが痛くなる。
帯に書かれたあとがきの言葉「略ー最後の血の一滴までやりつづけようと思っていることがある。それは文章を書くということだー略」という言葉にグッとくる。自分もときどきなぜ文章を書いているのだろうと思うことがある。でも書こうと決めている。「書く」という行為の持つ力。書くことの可能性。それを実感しているからだろう。彼は「文章を突破口にして、可能な限り突き進みたい」と言う。書くことが少しでも命の力になってほしい。