長年の溜飲を下げる

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [DVD]ニュー・シネマ・パラダイス」は好きな映画のひとつだ。トトという映画好きの少年と映画館の映写技士アルフレードというおじさんの物語。終り方がオシャレ♪トトは映写室でアルフレードからたくさんの影響と愛を受け、成長していく。

昨夜チラリと見たTVで、その映画について触れていた。そこでひとつ納得したことがある。観たのはずいぶん前だから、記憶はおぼろになっているが、いろいろ感じるところの多い映画だった。その中で、未だに気になっていることがあるのだ。物語のなかの人物のことなのに、そんなに気にするのもなんなのだが、消えないでいた。

主人公トトは成長し、郷里を離れ映画監督になった。ある朝母親から電話があるシーン。ベットで女性が電話を受け、隣に寝ているトトに取り次ぐ。母親は用件のあと「いつも電話にでる女性が違うのね」というようなことを言う。それから、少女の姿を思い出すシーンがある。そのことが気になっていたことなのである。

彼は少年になり恋をする。彼女と幸せなときを過ごすのだが、彼女と引き裂かれるようにして別れることになる。その後、りっぱに監督になった彼であるが、こころにあいた穴は消えない。好きな映画の作品を作っても、素敵な女性を抱いても、こころの空白は埋まらない。彼の仕草からそんなことを暗示させる。

それが彼の作品への情熱にもなっているのか…。とも思うのだが、どうもしっくりこない。「しかし、それはすり替えではないのか、トト」。「ごまかしきれるものではないぞ、トト」。「向き合えよトト」と、こころの中の声はつぶやく。それを私は男性のロマン志向とか男性の弱さとか、どうしようもなさとして、解釈する事にした。

ところが、昨夜の解説によると、本当はもっと長いものだった。それが興業上の理由で、大幅にカットされ、その結果、テーマまで変えられてしまったということだ。当初は、その少女と再会するラブストーリーだった! なんとなんと。
「そういうことだったんだ。やっぱりね」。やっと腑に落ちた。あれでは少年トトの純粋な思いは切断されたままだし、思いの行き場所がなく、宙ぶらりんだったものね。これでやっと長年つっかえていたものが、下がった。

それを知った上で、はてどちらがよかったのだろう。どちらとも言えないなぁ。壮年になった二人の出会いのシーンが紹介されたが、壮年になった彼女ってのはどうなんだろう。そしてラストシーンは?(DVD完全版も発売しているらしい)
好みとしては、短縮版のテーマの方が好きかも。