痕跡のこる言葉

ルパン三世にも盗めまい」

願いはすべて達成されているから僕はちゃんと 悲しい
願いを実現するために僕は死に物狂いでだらだらする
そんなことの繰り返し に 飽きたので
腹の底を 塗り替えるよ

ありきたりのペンキを持ってきてくれ
いっさいがっさい入れ替えだ
取り外しだ
草木がありのままに伸びる力で僕は微笑んでやる

何の問題もなく生きているかのように生きる術を手に入れるなんて
ルパン三世にも盗めまい

unaで朗読会をしてくれたKくんの作品である。冷静で紳士的な態度の下で「孤独な音色」が響いているような君。そこから発せられる言葉はとりもちのように粘着性をおび、しばし私のこころの内にへばりつく。本当はだれでもが切実な言葉を持っているはず。その切実を見ようとするか、蓋をしてしまうかの違いなだけなのだろう。切実な言葉は蓋をして過ぎようとしている私の腕をググッと掴み、引き戻す。それほどの力を持つ。
この作品は彼にはめずらしく軽妙な調子。普通に生きるのは難しい。本当は普通などないのだから。