たかが雑誌、されど

文化の日で休日だったことに昨日気づく。白川靜氏漢字―生い立ちとその背景 (岩波新書)文化勲章を受けたそうだ。高齢で授賞式には参加されなかったらしいが。その白川氏の文章が載っている『風の旅人』(ユーラシア旅行社)isbn:490191913X は読み応えある雑誌だ。まだ二冊しか読んでいないが、白川氏のページがどちらもトップを飾る。ちょっと斜めで癖のある字から紡がれる言葉はズシリとした存在感。それに写真がいい。ユーラシア旅行社が発行するだけあって、あまり知られていない世界が紹介されている。サルガド氏の白黒写真の存在感、小松健一氏の忘れられないチベットの人の表情と色、高橋邦展氏のハイチの強烈な色と哀しさ…などなど登場する写真のどれもが網膜に張り付く。もちろん、文筆陣も重量級が揃っている。それから私は執筆者の紹介文が気に入っている。通り一辺倒ではなく、それを書いた人の気持ちがこもっている。

しかし、隔月にしてもこのページを維持するのは大変なことだろう。昨今の消費型の出版ではなく、全く商業ベースの外で起こっている動きだ。一読者としては存続が気になるところ。慢性的着ぶくれ状態のような出版ラッシュ。単に印刷物の束ではなく、“本”として成るのは、読者の関与があるからだと知人が書いていたが、万人受けでなくとも多少の読者の存在で、継続可能なシステムが、果たしていまあるのかどうか・・・本好きとしては、新刊、創刊と溢れんばかりの出版物に、これらの中からどのくらいが次代に読み継がれていくのだろうと、いらぬ心配をしてしまう。