命は難しい

『がんばらない』などの著者鎌田實医師のTVを観た。深夜の再放送。たまたまだが、今日で二度目。長年長野で地域医療に関わっているが、エイズチェルノブイリなど、多方面に活躍されている方である。命の大切さをいろいろな切り口から伝えようとしているように感じられた。ナチスの収容所を訪れたときに、ガイドさんから聞いた話をされた。希望をもち続けられなくて、自殺した人がたくさんいた中でも、生き残った人たちがいた。彼らは「ささやかな日常の営み」を丁寧にしていた人たちだったという。髭をそる、顔を洗う、歯をきれいにする、服装を整える…そんなことを道具のない中でもし続けた。なんだかわかる気がした。自分を見失わず、自分を保つ術は、特別なことではなく、日常の基本を丁寧にこなすこと、ではないかと思うっているからだ。

連続講座の最終回だったようで、最後に彼の両親の話をされた。病院のベットの中に潜り込む鎌田少年を、黙って抱きしめてくれたという母親は心臓が悪かった。脳梗塞で倒れた母を医師になっていた鎌田さんが担当した。延命治療をせず、ここまでだねと父親に了解を得ようとすると、すごい形相で、一週間でも長く生かしてくれと言ったそうだ。彼は断りきれず、父親に従い、何日か後に母親を見取った。父親は「満足できるものだった。ありがとう。きっと母さんも満足だったと思う」とお礼を言ったそうだ。母親は大好きだったが、父親とは折り合いが悪かった。後に、捨てられた鎌田氏を父親が救って育ててくれていた事実を知る。そして父親の気持ちもわかるようになっていく。鎌田氏は「命はむずかしいです」と言った。

ちょっとショックを受けた。私も延命治療をしたくないし、させたくない。でも、それを頑なに主張することが、果たして良い関係を生むか。主義にすることで、関係や命が見えなくなってしまう。ハッとした。