べてるの魅力

読売新聞の「医療ルネサンス」欄に「べてるの世界」*1が連載されていたそうで、友人がコピーを送ってくれた。連載は、初めて知った方にもわかりやすく書かれていたと思う。http://www.yomiuri.co.jp/iryou/renai/20040731sr11.htm

そのビデオを仲間と観た。ずいぶん前から、繰り返し繰り返し、その時々の仲間と観てきた。映画好きでもないのだが、ドキュメンタリーの監督に何人か縁があり、見る機会が多い。ある監督が「音楽のように繰り返し観たくなるようなものを作りたい」と言われていたが、まさにべてるのビデオもそういう類いのものである。

精神科医K医師とソーシャルワーカーのM氏と教会という場、そして地域の人たちのサポートがあって、べてるの家は生まれた。そしていまも、これからも生まれ続けている。(べてるには完成形があるわけではなく、理想卿にすることもなく、問題を抱えながら、日々を営み続けている継続体)従来の精神障害者の概念、医療の概念、援助の概念がすべて覆されたような、まったく違うステージに彼等は立っている。しかしそれが本来だと気づかされる。彼等を見ていると、まさにタイトルにある「ベリーオーディナリーピープル(極めて普通の人々)」なのである。そして健常者と言われる私たちの異常が見えてくる。彼等の苦悩が入れ替わる。そして彼等から癒され励まされ、示唆を自覚する。そんな不思議な世界なのだ。

一人ひとりが哲学者。そう思える。それはたぶん彼等は自分をごまかすことが出来ず、全部引き受けてしまうから。トコトン納得いく答えに行き着くまで膨大なエネルギーと時間を費やす。ココでは自分と向き合わなければ、何も始まらない。彼等は薬や入院や保護によって奪われてきた「悩み」を取り戻したのだ。金銭のこと、人との関係、恋愛、それらの苦労を引き受ける、それが人として自立することだと彼等は思う。

医療スタッフの言葉、当事者の言葉が一つひとつ宝石のように輝く。何年も苦労して獲得した実体のある言葉がこころに沁みる。そして驚くべきは彼等の発想力と創造力! 医療分野においても経済分野においても画期的な活躍をしているのだ。アイディアは深刻にならず、ユーモアのなかから生まれていく。それでもべてるは今日も問題山積みなのである。それが予定通り、順調ということなのだそうだ。

*1:http://www.tokeidai.co.jp/beterunoie/index040701.htmべてるの家の「非」援助論』,斎藤道雄『悩む力』,横川和夫『降りていく生き方』など関連本多数