都会に吹く風と青い空

徒然草」を読む会で案内役にお願いしているCさんへのインタビューに同席。日程が詰まっている中、なんとか都合をつけていただく。待ち合わせは池袋のジュンク堂。喫茶部に行くと満席。暑いせいで?誰もいないウッドデッキのテラスに座ることにした。それが、意外にも心地良かった。ビルの陰になっていて、涼風とは言えないが、いい風が吹いている。

宗教や西洋思想に詳しく、ライフワークの日本古典を通して、学び続けている外国籍の方である。名もなき在野の探求者。その姿勢こそ、彼の実践のスタイルなのだ。インタビューは濃厚、しかしながら難解を極めた。言語化困難の世界に入り込み、終始したからである。

言葉にしたとたん、そこから離れる。しかし、言語によってしかそこに近づけない。その矛盾と葛藤。実と虚。リアルとイメージ。三要素としての仕事・学び・吟味(吟味とは言葉を端折ると、慈しむとか愛でるという意味合いになるらしい)。観念化と真善美。等々、まさに言語にしたとたんに逃げる類の話であった。

誰もが「ある時、ある所の、ある人」なのである。以外はすべて後付け、表層に羽織っている衣装。彼が「自叙伝的な出来事を記述しても、それがその人に近づくことにはならない。その人を規定する意味はない」と言われたとき、そのことを実感した。Cさんはどこの国の人でもなく、どこに居るのでもなく、何を学ぶ人でもなく、いま私の前に居る「ある人」なのだということを。

彼の口から発せられる言語に酔いながら、仰ぎ見る池袋の空はどこまでも青かった。そこに浮かぶ雲もまた、衣装のひとつに過ぎないとでもいうように…。