真昼の連想

「八月に突入」と変換された。8月と打ち直そうとしたら、「八月」の文字を見たとたん、浮かんできたことがあった。そこからシナプスは次々につながり真昼の連想ゲームとなった。

想起したのものは映画「八月の鯨」と「八月の濡れた砂」である。「八月の濡れた〜」のテーマソングは大好きだった。井上陽水婦人である石川セリの気だるい歌い方が、切なさを増幅した。監督は今は亡き藤田敏八。藤田監督と言えば、ついさっき彼のことを思っていたばかりだった。それは「ベニスに死す」を観ていた時。なぜ普段ビデオなど観ない私が急に「ベニスに死す」などを観ていたのか?

受講している脳科学茂木健一郎氏の講義は、いつも半分は先端の学術資料により、半分はビデオや映像の文系からのものである。その日は「仮想する」ということから彼の好きな「ベニスに死す」の場面をいくつか観たのであった。それでどうしても通しで観たくなり、帰りがけに借りてしまった、という訳なのだ。実に単細胞的動機ではある。

早速ヴィスコンティの美を堪能したのだが、その主人公である老教授の仕草が、藤田氏を想起させたのだった。彼は鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」に俳優として出たことがある。台詞はほとんどなく、しゃべっても下手であったが、存在に雰囲気があった。そのキャラクターが醸し出す雰囲気(役柄もたしか教授だったかと)と、老教授が似ている気がした。それで久しぶりに「ツィゴイネルワイゼン」のレトロな雰囲気、大楠道代さんの妖艶も思い出すこととなったのである。