よあけ

毎日暑い。夜更けまで起きていたというのに、目が覚めてしまった。まだ夜明け前だった。流石に暑さも落ち着いて、そよそよとした風が入ってくる。寝るのも嫌になっていたので、ベランダに出て、新聞でも読むことにした。空は曇り気味だが山の端近くは明るい。今日も暑くなりそうだ。

年に何度もあることではないが、夜明けに立ち会うのは好きだ。空の色が刻々と変わっていく。夕日も好きだが、入日とは違う。どこがどう違うんだろう。感覚として、新生というイメージがあって、未知の感覚に満ちている。そんな感触も好きなのかも知れない。容赦なく照りつける太陽の光もまだいまはやさしい。

夜明けを改めて意識したのは絵本の『よあけ』(福音館)だった。まんまのタイトルだが、たしか杜甫の詩の世界を描いていたもの。おじいさんと孫が漁をする為に、湖に漕ぎ出す。ほとんど字がなく、画面は夜明け前から日の出までの湖と空を描いている。なんだかなつかしいような色づかいで、変化していく様がとても美しい。最後のページを繰ると「わぁー」となるような高揚がある。

と、ベランダでアレコレと想いをめぐらした。
暑くなる手前のひととき、爽やかな快感。たまにはこんなスローな日もあるのさ。