幼児の視点

かつて吉田拓郎梓みちよに書いた「メランコリー」という歌がある。その歌詞の二番は、「人の言葉をしゃべれる鳥が昔の人の名前を呼んだ…」という言葉から始まっている。(ああ、思い出した…)歌詞を作った喜多條忠*1はそのアタマができなくて、一週間を過ごしたそうだ。そんな時、幼い娘さんを連れ公園に行った。そこで彼女の言葉を聞いて、「これだ!」とひらめき、この歌詞になった。彼女は九官鳥をみてこう言った。「かわいそうな鳥さん。鳥さんなのに人の言葉を言わされているのね」。

お父さんの編集力もすごいが、九官鳥をみてその言葉を吐く娘さんもすごい。ヨチヨチ歩きの子からそう簡単に聞ける言葉ではない。普通なら、「キュウちゃん!」とか「こんにちは!」とか一生懸命話しかけ、返事を聞いては喜んではしゃぐような、無邪気な年頃である。

もし私が…と九官鳥の立場で想像してみる。また、もし猿の惑星のように、猫の世の中だとする。それで猫のペットとして私が食べさせてもらっているとして、猫語を覚えさせられ、うまいとか下手とか言われ、えさを与えられている様を想像してみる…ともに、かなり哀しいものがある。

*1:神田川」など多数の名曲を書いている作詞家