暮らしの中の美術

岡本敏子さんと島袋(shimabuku)道浩さんのトークショウに行った。好奇心旺盛で少女のようなところのある岡本さんのエネルギーは岡本太郎氏と似たものがある。ずっとご一緒していると、似てしまうものなのか。


島袋さんは海外で多く活躍されている若い美術家である。しかし、岡本さん曰く「これがなぜ美術なの?」と言うように、美術と言えないような突飛なことをしている。育った地域名産の蛸漁から蛸壺の製作、はまだしも、フランスの街の真ん中に150メートルのロープを渡し、ハンモックをつり、眠る。それも交通を止めてである。地域の人やたくさんの学芸員が関わっていた犬の水泳大会。みんな外国での仕事ではある。そりゃ、日本では無理だろうよ。彼はパフォーマーでもないし、アーティストと言わず、美術家だと言いきる。ハッとしたり、うれしい気持ち、美しいと感じる…が美術なのだからと。


食べること、料理することも好きだと言っていたように、その美術というものを、日常をひっくるめたところで考えている人なのではないかと思う。一番ピンときたことは輪ゴムくぐりである。普通売っているただの輪ゴムを広げて、足を入れ、腰をくぐらせ腕を抜き、頭をくぐりぬける。ただそれだけなのだ。それを様々なところでやる。二つつなげて二人がくぐる。三つで三人がくぐる。単純で誰にでもできる、けど意味はない。その一見くだらないことをやり続けながら、そこに起きてくる“何か”を彼は見ているのではないか、そう思った。バカなことをやるというこころの楽しみ方。組んでやるときに起きてくるコンタクト…。


そういうことを、自分もスペースで目論んでいるところがある。いま若ものがボランティアで関わってくれているが、彼等のやっていることが、それに近い。たとえば、スペースを盛り上げるために、空間に「さくら」を置こうというもの。さくらとは仲間うちでありながら、買い物客を装って買う人などのあの、さくらである。ばかばかしいことを一生懸命やる、それにおもしろさを感じているようなのだ。そんなところからも島袋さんには大いなる興味を抱いた。