少女は空想の世界を遊ぶ

ユリイカ』特集高野文子(2002・7月号)を読んでいる。おもしろい。「へぇ、そんなことだったの・・・スゴーイ」と感心することしきり。彼女の作品をまた引っ張り出してみる。なんたって執筆人がすごい。マンガの世界には疎い私だが、知っている異分野の人だけでも赤木かん子川上弘美梨木香歩香山リカ斎藤環・・。高野文子作品をそれぞれの領域、視点で論じている。深読みじゃない?なんて穿ったりするくらいの、評判だ。

私は私で、思うことがある。私の少女時代。高野さんとは世代が違う。のに、同時代に生きていたような、まるで見ていたような…。『黄色い本』などを見ると、どうも家庭環境が似ていたような気がする。『絶対安全剃刀』の<玄関>などはまるで私のこと。

夏休みの気だるい午後の一風景。
縁側からともだちが訪ねてくる。母は竹に朝顔の蔓巻く窓辺でミシンをかけている。自身も婦人雑誌のデザインを参考にして作ったようなワンピースを着ている。友達とちゃぶ台で渡辺!の粉ジュースを作って飲む。出たばかりのソーダ入りのヤツ。顔を近づけ、飛び散る粒々で遊ぶ。お母さんが柿の種を持って来てくれる。(我が家にも、新潟浪花屋の「元祖柿の種」のカンがいつもあった)。隣のしょう子ちゃんは「柿の種2つぶにピーナッツ一つの割合が一番美味しい!」なんて言いはっている。同じことを言い張った。ピーナッツは貴重だった。そしてお母さんが庭にある二段の物干しから洗濯物を取り込む場面。そう、竹ざおで2段だった!

それから家族で海水浴。我が家も、毎年隣のTちゃん家と新潟まで海水浴に行った。母たちの水着も絵とそっくりだ。そこで主人公のえみちゃんは波にさらわれ、おぼれそうになる。それが心的ショックになり、水恐怖症に。医者にいく。先生の言葉に対して母親が「別に泳げなくてもいいよね」とやさしい言葉を投げる。私にも同じような心的葛藤があったなぁ…。

で、遊びながら「隣のしょう子ちゃんは特に好きじゃないけれど、よく遊びにくるから・・。」と心の中でつぶやく場面。「そういう感覚も、あった」。中学まで。ひとり空想の世界を遊んでいたという感じだ。彼女の漫画の世界は一見普通ではないみたいだが、実は誰にでも心あたりがあるものではないのか。