歴史を歴史物語にする危険
今年の夏、終戦記念特集で放映した重厚な番組の反響、まとめのような番組をNスペでやっていた。折りしも真珠湾攻撃12月8日前夜であった。ゲストは、同年代という半藤一利・澤地久枝氏と団塊世代の海軍史研究者・戸高一成氏。生きながらえた海軍トップが行った反省会のテープを保護保存してきたという方。
やっと、今年になって公開されたという録音テープは400時間に及ぶという。参考にところどころ聞いたのだが、唖然とする。「先の見通しは考えていなかった」とか、「自分たち軍のことが一番で、国のことは考えていなかったなぁ」とか、「予算が取れれば、何でもやりほうだいだ」だとか、あまりにお粗末で、無責任。情けない・・・。こんな瑣末なことで国民を巻き込んだのか!
半藤氏は言う。当時のマスコミの扇動や世間の熱狂を思うと、敗戦と判った時点でも中止はできなかったでしょうと・・。皇族をトップにいただいて、やりたいようにやれた海軍。開戦に向けて、皇族の責任を回避する形で新たな組織「第一委員会」なるものをつくり、権力を移譲していった。終戦後も反省の形をとらない。個人ではなく組織の責任であり、組織には人格がないから責任は取れない、のだそうだ。戦前戦中からの当事者たちが終戦後もそれなりのポストを得て、今に至るなど、普通では考えられないことである。
半藤一利・澤地久枝氏の少年の日の体験が、イラン映画「子供の情景」(ハナ・マフマルバフ監督)で戦争ごっこに狂信的に熱中する少年たちと重なった。他人事ではない、かつての日本の情景である。そして今日を構成しているのは当時の少年たちであり、戦争当事者たちとは過去ではなく、地続きなのであった。半藤氏は、いま歴史ブームだが、歴史(史実)を歴史物語にしてしまっている危険を危惧していた。
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