オノマトペ

今号の『文学界』は、3月に駒場で行なわれた国際シンポジウムの報告が掲載されている。四方田犬彦柴田元幸氏らが企画し、各国から村上春樹作品の翻訳者が集った。私も参加したが、報告は翌日に行なわれたワークショップの模様だった。前日にもチラとは触れたが、なにせ持ち時間が2、3分と限られていたので、駆け足だったが、ここではより長い時間、擬声、擬音語の工夫など、翻訳者たちが興味深い話を展開している。

訳者には前もって『スパナ』と『夜のくもざる』を訳してもらっている。例えばそこには鎖骨が折れる音として「グシャッ」という表現がある。
ロシアの方は似たような音として「フリャース」にした。広東語と北京語では「ガラッ」と「ガツッ」(漢字で)という音。ノルーウェーでは擬音語はほとんどないそうだが、中国語では近い音がなければ、口へんをつけて、適当な文字を作ってもかまわないという。おもしろい。お国柄がでていておもしろい。

日本語は擬声・擬音語が豊富だという。さらさらとかじわじわとかしとしととかつらつらとか・・確かに日本情緒を表現する語彙は豊富だ。そのうえ、マンガ王国になった今日では、グサッ、バシッ、ズコッとか、さらなる翻訳困難語彙も増えていることだろう。

だが、私は擬声・擬音つまりオノマトペの類いがとても好きなのだ。考えてみると、からだに直接訴える感じがある。意味しない分、大脳を介さないからかもしれない。