「楽しくないのはいや。だけど泣きたい」心理

七草がゆを食べたと思ったら、世は成人式と三連休だった。
買い物に出たら道路が買い物渋滞でメチャ混み。正月より混んでいてビックリ。あまり寒いのでお手軽な暖房具を買い足そうと思い、安売り電気店に行ったら、また驚いた。なんと暖房器具の棚が見事に何もない。まるで共産圏の店舗のようである。断り書きには「厳しい寒さと大雪のため、出荷が滞り品物が不足している」とある。(みんな考えることは同じなんだね)

さて、新聞に小林信彦さんが自分の作品について書いている。1966年に講談社から出した『冬の神話』について。処女出版とも言えるもので、彼の少年時代を書いたもの。内容は集団疎開の体験だが、彼にとってはもっとも熱い体験。64年には東京オリンピックがあり、時代は高度成長真っ只中。世の動きとは全くかみ合わなかった。大人の読者は戦争体験を忘れたかった。いくつかの出版社で断られ、絶望のなか講談社の編集者に、これは良いものだからと言われ、話を進めてくれてできたのだそうだ。作品を認めてくれたのが『火垂るの墓アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)野坂昭如氏だった(当然と言えば当然)。

その続編とも言える『東京少年東京少年を昨秋新潮社から出したそうだが、やはり集団疎開関係の内容は「楽しくない」という投稿があったそうだ。(楽しいはずがないのに)小林氏はいま売れている本やドラマ、映画はファンタジーか、ノスタルジー、“泣かせるもの”だと言う。「どうも日本人は泣きたがっている」と彼は分析する。

最後に彼は、そんな現象と重ね「日本がイラク戦争にコミットしているのに、日本人がリアルな戦争に興味を示さないのが不思議というほかない」としめている。