「八犬伝」で観る

年始のTV番組「八犬伝」を観た。ワダエミの衣装デザインに興味があったことと、だいたいのあらすじを把握したかったため。あの膨大な物語を文字で読む気にはならない。話しを聞いたり、画面でも切れ切れに観ているはずだが、イマイチ掴めていない。5時間前後にまとめられているので、内容はわかりやすく、単純化しているだろう。それがよかった。

始まってすぐに二人の剣士が出会い、一日目でほぼ八剣士の顔ぶれが出揃う。早い。なかでタッキーが主役格だった。義経役をやった経験が生きているのか、思ったよりスピード感ある動き。鮮やかな緑青の衣装、刺し子を施すことで、庶民性を表現しているのか。
悪役はかんのみほ。怨念が肥大した執念深いクモの妖怪である。赤と金の升目模様の衣装は強烈なインパクト。それに呼応して、真っ赤な口角のつり上がった口紅と下瞼のアイシャドウが妖艶さを増幅させている。普段は全く印象薄い女優さんだが、鬼気迫る演技。一番のヒットだ。

ヒール役が試合を盛り上げ、おもしろくしているのだと『悪役レスラーは笑う』(岩波新書刊)に書かれていたが、ドラマも全くそのとおり。ヒール役が悪く際立つほど、ヒーロー(善)が引き立つ。かんのみほは十分にアイドルの役者たちを引き立てていた。以降のドラマを彼女を主眼に観ていると、なかなか楽しいものになった。

このように、視点を変えてみると違うおもしろさに出会える。例えば色で見てみる。衣装に反映されていた隠喩としての色。邪の赤と正の青。権力・炎・血に対する平民・家紋の青・紺碧の空。それもイメージ作りに大いに役立っている。

草原の決闘シーンは中国ロケのようだったし、兵士の数など、「乱(衣装:ワダエミ)」のシーンを彷彿させる壮大なスケール。大森美香の脚本は平和への願いと戦いがなくならない世界の常を憂う台詞が挿入されていたし。TVドラマとしては相当力が入っていたのではないだろうか。