弱さの強さ

北海道に「べてるの家」というコミュニティ(?)がある。ありていに言えば精神障害者の自立施設と言うことになるのだが、その営みは未来的な視点をたくさん含んでいて、なかなかおもしろい。存在を知ってから10年は経つだろうか。最初ソーシャルワーカーの向谷地氏と出会った。ヘンだけど非情に誠実で真っ当な人。なんとも言えない味のある人物。いたずらっぽい目をキョロキョロさせて、ニタリと笑う。その彼と一人の精神病患者の関わりからべてるはスタートした。彼は当時タブーとされていた患者と共同生活をはじめた。その視点からして飛んでいる。さらにこれまた独特のキャラを持つドクター川村氏との出会いにより、彼らのアイディアは着々と実践に移されていった。地域の受け皿もでき、いまでは日高地区一番の利益を上げる企業に発展している。もちろん役員、社員みんな精神病経験者である。

その様子をビデオに納めたものがある。それをunaで観ている。何度同じものを観たことか。それでも飽きない。彼らはよくしゃべる。自分を語る言葉を持たなかった彼らは、共同生活のなかで、真の言葉を獲得していく。一つひとつ彼らのからだで発酵して得た言葉。それらを聞いていると、毎回新しいことに気づく。一緒に観た人の感想もさまざまだ。それがおもしろい。

いろいろな切り口で観れるビデオだが「仕事」にフォーカスしてもたくさんのヒントが見えてくる。「利益のないところを大切に」、「福祉的なやり方で、与えられ、用意されたものをやっていて、彼らに光りが見えてくるのだろうか」、「頑張り過ぎると発病してしまう彼らには安心してサボれる会社づくり」・・。

変わらなくていいから変わるのであり、治せないから治るのであり、頑張らなくていいから頑張れるのであり、サボってもいいからサボらなくなるのであり、幻聴を否定しないから幻聴が消えていくのである。そんなことも実践から見えてくる。

因みにビデオには予告編とある。全部が予告編なのだ。べてるは常に変わっているから「べてるとはこういうものだ」というフィルムを作ることはできない。だからずっと予告編なのだと四宮監督とても普通の人たち ベリーオーディナリーピープル~浦河べてるの家からは言う。
べてるの家 http://www.tokeidai.co.jp/beterunoie/index040701.htm