本能の不思議

夜中にSから電話。そのままTVを観る。黄色スズメバチの生態を紹介していた。たいしたもんだ。巨大な球形のマーブル色の巣を作る。だが、最初は女王蜂一匹からはじめるのだ。そこに秋の終りに受精した卵をひとつづつ産んでいく。誕生するのは全て働き蜂(♀)。彼らはひたすら巣を大きくする作業をする。セメントをこねて伸ばしていくような作業を全て口でする。どんどん産み、どんどん人口が増え、どんどん巣が大きくなる。
しかし、そのように築き挙げたマイホームを一度引っ越すのである。一人で作り上げる巣は、まず目に付かず安全なところを利用する。で、家族が増え、力がついたところで、軒下など空間が大きく取れるところを選び直すのだ。カシコイ。

新居に移転し、さらに外装部隊が巣をどんどん拡大していく。一方内装部隊の働き蜂は、狭くなった空間の壁を壊し、その素材を産卵室にリフォームしていくのだ。スゴイネ。

なぜそれほどに大きくするのか?天敵大スズメバチなどに対抗する為であった。獰猛な彼らは巣を壊し、中から幼い子どもたちを奪って食べてしまうのだ。オソロシヤ。そこで彼らの対抗策は同種で巣を営む近隣の住人達と力を合わせて戦うのだ。ご近所の底力。これには驚き。

そこにある日一匹?オスが誕生する。女王蜂も何匹か誕生する。(なぜ、産み分けられるのだろう。どういう情報で時期がくるのだろう?)やがて、それぞれに巣立つ。外界で交尾をする。なんとオスは儀式を終えるとその一生を終えるのだ。(食べられないだけいいか…)
次世代女王蜂は目立たない安全なところで、単独で越冬するのである。

なんと、ハチたちの寿命は一年なのであった。従って大騒ぎして作った、巨大な巣も一年で空家になるというわけなのである。かなしい宿命。がしかし、すばらしい叡智満載。

ところで、そのマーブルに彩られた巣の素材であるが、椹(さわら)の木肌を口で削りとったものと、粘液でできている。魚のさわらは知っていたが、木のさわらは初めて見た。それがなければ生きられないということだろうか。それもキツイね。動植物の生態には不思議がいっぱいだ。

そう言えば、椹木野衣氏の『戦争と万博』戦争と万博が届いていたなぁ。これもおもしろそう。