漱石という亡霊

このところよく漱石先生の記事を目にする。と思ったら、『我輩は猫である』以来100年目なのだそうだ。つまり小説家漱石先生誕生100年という訳である。正月もっくんの漱石を見た。久世光彦演出「夏目家の食卓」というものだ。ハチャメチャな内容。久世さんの演出だからそうなるだろう。それに義理の母になる希木樹林が相変わらず怪しげな存在感で出演している。最後にちゃんと「このドラマはフィクションです」と書かれてはいるが、夏目家の方々はどうなのかしら、と心配になるくらい。でもおもしろかった。当時の夏目家の空気が想像できもした。

で、その夏目家の孫夏目房之介漱石の孫はおもしろかったと書いている。深層はわからないが、まあ立腹はなかったらしい。『我輩は孫である』というタイトルでエッセイを書いていた。同様のタイトルの本を出せるようになるまでに、ずいぶん漱石の亡霊に悩まされたということだ。文豪を挙げてと言われれば、誰でもが必ずや漱石を挙げるだろう。未だに好きな作家のトップだそうだ。そういう人物を祖父に持てば、なかなか大変だ。しかも生れたときには、おじいちゃんはいなかったので甘えたことはない。

突っ張っていたり、亡霊から逃げまくっていた氏の辛さは私には到底想像できない。まあ凡人の家系に生れてよかったこともあるというものだ