ぷちナショな人

精神科医香山リカ著『ぷちナショナリズム症候群ー若者たちのニッポン主義ー』(中公新書)をおもしろく読んだ。やや彼女の危機感に収束させるような傾向にはなってはいるが、取り上げている事象には、心当たりがあるものばかりだった。


自分でもうまく言語化できない葛藤を、激しく衝動的な行動で表現してしまう病理的なメカニズムを精神医学では「アクティング・アウト」と言うそうだ。(べてるで“爆発”って呼んでいるものだな、きっと)しかし、それは一時的な開放になるかもしれないが、葛藤自体は解決されずに、また不満や焦燥感はつのるというもの。彼女は何でも「キャー」、「カワイイ」で済ます若者たちの姿から「プチ・アクティング・アウト」という呼び名を思いつく。そして、さして吟味することなく「なんでもいいから思い切り喜びたい」という昨今の世の風潮を「プチ・アクティング・アウト型な人たち」と言うのだ。W杯、阪神優勝などの熱狂ぶりは、スポーツ音痴の私から見ると「まさに」であり、なにか不安を解消するための転化行動に思えてならなかった。


また、彼女はいま流行りの「日本語ブーム」にも言及している。斎藤孝『声に出して読みたい日本語』が出たときに、すぐに私も購入したが、開いてみて、どうしても読む気になれなかった。彼の文章がこころに届かないのだ。それに言動に、なにか気持ちの悪さを感じてしまった。私自身、古典を読む会や朗読の会をしている。日本文化のすばらしさをもっと享受したいと思っているひとりである。けれど、どこかに「違うんだなぁ」という違和感があったのだ。そんな違和の水脈が、香山さんの説明で見えた気がした。モヤモヤの素は多分「無邪気な屈託のなさ」のもたらす功罪と危機感ではないかと。彼女はそれを「体育会系の明朗さ」「体育会系な無邪気で屈託のない…」と表現する。ちょっと安易な括り方ではあるが、「そうか、私のひっかかりとはそれだったのか」と溜飲をさげたのも事実。彼女の見方を借りると、ずいぶんスッキリするものがある。