コーヒーを飲む

一杯のコーヒーがある
飲もうと思う


口に運ぶ
あたたかさが指先に届き
香りが鼻の粘膜に届く


唇を少しゆるませながら
陶磁器を意識しながら
縁を唇に当てる


おもむろに息を吸いながら
舌の先でコーヒーを迎える
熱いときは すするようにしながら


舌を前歯の後ろあたりにつけ
コーヒーを舌と顎と頬で味わうように含み込む
頬の粘膜が歯列から流れ出したコーヒーを捕える
奥歯にもあたたかさが伝わる


息を止めて舌を上顎に押し付け
一気に喉の入り口の暖簾を押し上げる
のど仏がグンと上にあがり、液体は流れ込む
多分気管に蓋をして食道を開けているはず・・・



コーヒーを飲むというたった数十秒の行為に、どんなに多くの機能が作動していることか、どれほど五感が働いていることか・・・。
それに通常はパンをかじったり、音楽を聴いたり、本を読んだり、人としゃべったり…と、いくつかの重層した行為が加わるのだ。
こんな風にしてひとつの行為に意識を集中させてみることをたまーにしてみる。と、このすばらしい連係プレーに愛しさのようなものが湧き上がってくるのだ。たいしたものである、私のからだ。